1か月に2回のペースの小学校での「読み聞かせ」。
数えてみたらかれこれ7年目になりました。
同じ学年に同じ本を読むことがないように、自分の中で「○年生はこの本」と決めている本があります。
もちろん、図書館や本屋さんでたまたま見つけた面白そうな本を読むこともありますが…
6年生には必ず「星 新一」さんのショートショートの中の一つ「おーい、でてこーい」を読むことにしています。
「おーい、でてこーい」どんな本?
台風が過ぎ去った次の日、村の社が飛ばされ、その跡地に深い深いとにかく深い穴を発見する村人。
石を投げ入れてみたり、「おーい、でてこーい」と叫んでみたり…。
しかし深い穴の底からは何の反応もなく、その珍しい「穴」目当てに、新聞記者や科学者が集まってくるのですが…どうしようもできない。
そして、彼らが考えた答えは「埋めてしまう」こと。
それを聞いた街の「利権屋」が新しい社を作る代わりにその穴を私に下さい、と言い出します。
村人は大喜び!
そして利権屋は、その穴を「なんでも捨てられる穴」として宣伝し、あらゆるものを色々な人が捨てにくる…というお話。
その結果…
続きが気になる方はぜひ一度読んでみてください。
おーいでてこーい ショートショート傑作選 (講談社青い鳥文庫)
「おーい、でてこーい」を読んで子供たちの反応
さらっと読んでちょうど10分くらいで読み終える物語なので、静かに、あまり感情をこめずに読みます。
1958年に書かれた物語なので、ところどころ小学生には聞きなれない難しい言葉が出てきます。
子供たちの頭には一瞬「?」が浮かんでいるとは思いますが、それに構わずどんどん読んでいきます。
様々な人たちが穴にものを捨てていく場面も休む暇なく読んでいきます。
そして…
場面が変わり、建築中の高層ビルのラストシーン。
ある日、建築中のビルの高い鉄骨の上で鋲打ち作業を終えた工員が、ひと休みしていた。
彼は頭の上で、「おーい、でてこーい」
と叫ぶ声を聞いた。しかし、見上げた空にはなにもなかった。
青空がひろがっているだけだった。彼は、気のせいかな、と思った。
そして、もとの姿勢にもどった時、声のした方角から小さな石ころが彼をかすめて落ちていった。
だが彼は、ますます美しくなってゆく都会のスカイラインをぼんやり眺めていたので
それには気がつかなかった。引用:星 新一「おーい、でてこーい」
この場面だけはゆっくり景色が浮かぶような口調で読みます。
すると…わかる子にはわかる、最終場面。
たいていの子は「なんでも捨てられる穴はすごい!」と子供らしい感想を言ってくれます。
しかし、1クラスに数人は空から降ってくる「石」が、村人が最初に投げた「石」だと気付いてくれる子がいます。
学年によっては全員が「なんでも捨てられる穴はすごい!」という年もありますが…。
そしてまれに…「過去と未来はつながっている」という物語の核心に気が付く子も^^
それが嬉しくてこの本を読み続けているのですが…でもこの結末に今は気が付かなくてもいいんです。
というのも星新一さんのショートショートは本好きな子供ならきっとどこかで手に取る日が来るはず。
その時今よりも、成長していたら…その時は気がつくかもしれない。
私の中ではそれが読書の醍醐味!と思ってるのでそれでいいのです。
最近娘に聞いたのですが、中三の英語の教科書にさっそく「おーい、でてこーい」の英語版が出てくるのだそう。
そんなすぐに、また出会うんだ!!
その時に、元の物語を知っているのといないのとでは違うよね!?
星 新一さんのショートショート、けっこう英訳されているんですね。
きまぐれロボット―The capricious robot 【講談社英語文庫】
「おーい、でてこーい」の物語の深さにいつか気づいてくれる日がくるといいナ♪