2017年1月17日、都庁で様々な団体の表敬訪問を受けた小池都知事。
その日最後の訪問となった「東京都日野市立七生緑小学校合唱団」の歌声に涙したそうです。
東京日野市立七生緑小学校はNHK全国学校音楽コンクール(Nコン)の小学校の部で4年連続金賞受賞するという合唱の有名校。
その児童たちの校名に合わせた緑色のTシャツと元気な歌声に小池都知事が感涙!
そこで、気になる「未確認飛行物体」ってどんな曲?
なんだか歌詞がユニークとのこと^^
さっそくYoutubeで検索してみると…ありました!
合唱曲「未確認飛行物体」ってどんな曲?どんな歌詞?
未確認飛行物体
作詞 入沢康夫
作曲 横山潤子
薬缶(やかん)だって
空を飛ばないとはかぎらない
水のいっぱい入った薬缶(やかん)が
夜ごとこっそり台所をぬけ出し
水のいっぱい入ったやかんが
夜ごと台所をこっそりぬけ出し
一生けんめいに 一生けんめいに
一生けんめいに飛んで行く
一生けんめいに 一生けんめいに
心もち身をかしげて
一生けんめいに飛んで行く
町の上を 畑の上を
また、つぎの町の上を
一生けんめいに 一生けんめいに
一生けんめいに飛んで行く
一生けんめいに 一生けんめいに
心もち身をかしげて
天の川の下 飛んで
渡りの雁の列の下 飛んで
人工衛星の弧の下を 飛んで
息せき切って 飛んで
飛んで 飛んで 飛んで
(でも、もちろん そんなに速かないんだ)
そのあげく砂漠の真ん中に
一輪咲いた淋しい花
大好きなその白い花に
水をみんなやって戻ってくる
作詞家 入沢康夫さんについて
なんという偶然!
たまたま気になって探した「未確認飛行物体」の歌。
その歌の作詞者「入沢康夫」さんは松江出身の方でした!!
1931年松江生まれ
東大仏文科卒 詩人
主な詩集・評論集
『唄──遠い冬の』(毎日芸術賞)
『漂ふ舟』(現代詩花椿賞)
『夢の佐比』
『駱駝譜』
『歌──耐へる夜の』
『水辺逆旅歌』(歴程賞)
『死者たちの群がる風景』(高見順賞)
『牛の首のある三十の情景』
『わが出雲・わが鎮魂』(読売文学賞)
『ランゲルハンス氏の島』
『宮沢賢治プリオシン海岸からの報告』
『詩の逆説』
『詩にかかわる』
『アルボラーダ』など
軽快なメロディに、やかんが空を飛び海を越えはるか砂漠にけなげに飛んで行く様子が思い浮かび、心がじーんと温かくなる気がします。
この詩について書かれた、高橋順子(詩人)さんの感想を紹介します。
書斎にいても旅をすることは可能である。
むかし栄えた都へ、冥界へ、地図にない島へ──。
夢や悪夢の世界に似ているが、その中で自由にふるまうというよりは、どこか切実であるのが、入沢康夫の詩である。
「未確認飛行物体」という短い詩がある。「薬缶だって/空を飛ばないとはかぎらない//水のいっぱい入った薬缶が/夜ごと、こっそり台所をぬけ出し/町の上を、/畑の上を、また、つぎの町の上を、/心もち身をかしげて、/一生けん命に飛んで行く。」
これが前半である。「心もち身をかしげて」というのは薬缶の習性である。身をつよく傾けると中の水がこぼれてしまうので、ちょっとだけ、あるいはつるの部分だけかしげているのだろう。
子どものころ私は絵本で、台所の器物が夜になると踊ったり歌ったりするというお話を読んだが、そんなメルヘンの雰囲気がある。薬缶はどこへ、何をしに行くのだろう。
「天の河の下、渡りの雁の列の下、/人工衛星の弧の下を、/息せき切って、飛んで、飛んで、/(でももちろん、速かあないんだ)/そのあげく、/砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、/大好きなその白い花に、/水をみんなやって戻って来る。」
「息せき切って」急いでいるのは、朝までに台所に戻って、なにくわぬ顔でガスレンジの上にいなければならないからである。でもあの飛行に適さない体が速かろうはずがない。
薬缶の夜間飛行は砂漠の花に水をやるためだった。
「水をみんなやって戻って来る。」薬缶は全身的な愛を花に捧げて戻ってくるのである。
滑稽で、美しい。
私は薬缶の中に浄化用の炭をいれ、いつも水を満たしている。
夜寝る前、ちらっとこの詩が頭をかすめることがある。
日本経済新聞 2002年5月12日
また大岡信(詩人)さんも、次のように書いています。
薬缶だって/空をとばないとはかぎらない。
入沢康夫『春の散歩』(昭和57)所収。空飛ぶ薬缶の旅を語った「未確認飛行物体」という十六行の詩の冒頭二行。
水がいっぱい入った薬缶が、毎夜こっそり台所をぬけ出し、町や畑の上を懸命に飛んで行く。飛び続けたあげくに、砂漠の真ん中に一輪咲いた大好きな淋しい白い花に水をみんなやって戻ってくる。現代詩にはこんな優しい小品もあるんです、というような作で、こういう未確認飛行物体なら、大いに歓迎です。朝日新聞 2004年10月7日、「折々のうた」欄より
小池都知事はその昔エジプトのカイロ大学に在学しアラビア語もペラペラとのこと。
砂漠に咲く一輪の白い花に自分を重ねたのかも?と思ってしまう歌でした。